【ジュニアボランティア教育 効果的に進めるためのミニポイント】へ
アイマスク体験の授業。 ジュニアボランティア教育の「原点」「定番」「真骨頂」というべき授業だ。この授業をやると,多くの授業者はある一つの壁にぶつかる。それは,アイマスクをつけていざ体験となると「真剣さが足りない」「ふざけてしまう」という子供の表れが見られることである。私の場合も例外ではなかった。(無論,さらりといく人もいるがそれはかなりの力量の持ち主だ。) この状態は好ましいことではない。 何とかするのが心ある教師だ。
最初に体育館でアイマスクをして二十メートルほどの直線コースを歩かせることにした。目の不自由な人の立場に立たせてみるのである。途中には三角のカラーコーンやマット,踏切板が置いてある。これは障害物だ。
まず,代表のA君にやらせてみた。果たしてここでどんな事態が想定されるであろうか?
カラーコーンにぶつかる。マットや踏切板につまずく。いや,方向さえままならず壁にぶつかるかもしれない。怖くて座り込んでしまう場合もあろう。
実際,その子はカラーコーンにぶつかって,そこで止まってしまった。
ではそうなってしまった時,それを見ているクラス集団はどんな反応を示すだろうか。「大丈夫?」と声を掛けるのだろうか。いや,ぶつかる前に「危ない」と叫ぶかもしれない。
私のクラスでは…。多くの子が笑ったのである。これは見過ごしにできない。
「今,笑った人は,その場に立ちなさい。」
子供たちの中に緊張感が走る。穏やかに,しかしキッパリと告げる。
「あなたたちは笑いましたね。誰を笑ったことになると思いますか。アイマスクのA君ですか。」
しばしの間(ま)。張りつめた空気。私は続ける。
「違うのです。あなたちは目が不自由な人を笑ったことになるのですよ。目が不自由な人が何かにぶつかって困っているときに,あなたたちは笑うのですね。とても残念です…」
はっとした子供たちの顔,顔,顔。
「今からすることは少しでも目の不自由な方の気持ちを知り,その立場に立つ学習なのです。これからは真剣に取り組むのですよ。ハイッ,座りなさい。」
体育館はしいんとしている。私は言う。
「笑わなかった人,立ちなさい」
四人がさっと立った。
「すばらしい。いい顔をしている。輝いている。心も光っているね。」
※さて,向山洋一先生だったらこのような場合どう指導するのだろうか。→向山先生の場合